【ALLDAY PROJECT】TARZZAN炎上はなぜ?事務所が沈黙を貫く4つの理由を徹底解剖

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Written by 編集者

2025年9月2日

もし、あなたの“推し”が深刻な人種差別問題で炎上し、所属事務所がそれを完全に無視し続けたらどうしますか?

これは、K-POPファンなら誰しもが考えたくない悪夢かもしれません。しかし2025年、K-POP界のヒットメーカーTeddyが率いるエリートレーベル「THEBLACKLABEL」からデビューした新人、TARZZAN(タザン)を巡って、まさにその事態が起きました。

彼のスタイルや名前が「文化の盗用」であるとして、主に海外のファンから厳しい批判が殺到。しかし、所属事務所であるTHEBLACKLABELはこれに一切反応せず、プロモーション活動を続行したのです。

この記事は、どちらかの側に立って誰かを糾弾するためのものではありません。

メディア分析の視点から「なぜ事務所は沈黙を貫いたのか?」という最大の謎を解き明かし、この一件から、私たちが愛するK-POPの未来について何を学ぶべきかを一緒に考えていくためのものです。

【第1章】一体何が問題なのか? – TARZZAN炎上の「3つの火種」をわかりやすく解説

なぜ、一人の新人アーティストがこれほどまでに大きな論争の的となったのでしょうか?複雑に見える炎上の原因は、大きく3つの「火種」に整理できます。

火種①:ビジュアルの問題(見た目の盗用)

最も直接的な批判は、彼のビジュアルスタイルに向けられました。

  • 髪型: デビュー以来、ブレイズやコーンロウといったスタイルを一貫して取り入れています。これらは、黒人コミュニティにおいて文化的・歴史的に深い意味を持つ髪型であり、その背景を理解せずに安易にファッションとして模倣することは、敬意を欠く行為だと見なされがちです。
  • ファッション: 歯につけるアクセサリー「グリルズ」や特定の服装が、アフリカ系アメリカ人のヒップホップカルチャーを表面的に真似た「コスプレ」のようだと批判されました。

火種②:言動の問題(パフォーマンスの盗用)

見た目以上に深刻視されたのが、彼の行動や言動でした。

  • Nワード使用疑惑: 炎上を決定的にエスカレートさせたのが、車中でラップをしている動画です。この中で、人種差別的な意味合いを持つ非常に重い言葉である「Nワード」を使用したとされています。この重大な疑惑に対し、事務所からの説明や謝罪は一切ありません。

火種③:名前の問題(歴史の盗用)

そして、最も根深い問題とされたのが、彼のステージネーム「TARZZAN」そのものでした。

  • 歴史的背景: 「ターザン」は、白人男性が「未開の」アフリカを支配するという、植民地時代の差別的な思想(レイシズム)に根ざした物語の主人公です。原作では「ターザン」という名前自体が、現地の架空の言葉で「白い肌」を意味するとされています。
  • ファンの受け止め方: 多くのグローバルファンにとって、この名前を選ぶ行為は、歴史への無知か、あるいは意図的にアフリカの人々を嘲笑していると受け取られました。

これらの火種はそれぞれ独立しているわけではありません。「ターザン」という名前が加わることで、彼の髪型やファッションといったビジュアル的選択が、単なる無知な模倣ではなく、植民地主義的なファンタジーに基づいた意図的なパフォーマンスとして見なされ、批判がさらに深刻化したのです。

【第2章】沈黙の裏側:THEBLACKLABELはなぜ謝罪しないのか?計算された「4つの理由」

ファンが最も知りたかった「なぜ事務所は黙っているのか?」という疑問。その答えは、単なる「無視」ではなく、緻密に計算された「戦略的沈黙」にあると考えられます。

理由①:市場の天秤 -「国内」と「海外」どちらを優先?

事務所は、オンラインで声を上げる海外ファンを「声は大きいが、CD売上など直接的な収益への影響は限定的」と判断した可能性があります。一方で、この問題に比較的関心が薄い韓国内の主要市場や投資家を優先し、「嵐が過ぎ去るのを待つ」という冷徹なビジネス判断を下したのかもしれません。

理由②:「謝罪の罠」というジレンマ

現代のSNSでは、一度謝罪しても「誠意がない」「内容が不十分だ」と、かえって炎上が拡大する「謝罪の罠」に陥ることがよくあります。偽の謝罪文まで出回る状況で、事務所は新たな火種を提供することを避けるため、沈黙を選んだと考えられます。

理由③:ブランドイメージの死守

THEBLACKLABELの親会社でもあるYGエンターテインメントのブランドイメージは、「クール」で「ヒップホップ」が中心です。そのアイデンティティの中核をなすスタイルについて謝罪することは、自社のブランドそのものを否定し、弱腰な印象を与えるリスクがあったのです。

理由④:過去の事例から学んだ「使い分け」

実は、THEBLACKLABELは過去に謝罪したことがあります。下の表をご覧ください。

ケーススタディ(アーティスト/グループ)論争の性質事務所の対応結果
Jeon Somi (TBL)盗作疑惑(MVのアニメーション)迅速に謝罪と該当シーンの削除問題は速やかに解決
BLACKPINK (YG)宗教的配慮の欠如(ヒンドゥー教の神像)謝罪とMVの修正論争は沈静化し、敬意ある対応と評価
TARZZAN (TBL)文化の盗用戦略的沈黙 / プロモーション継続国際的なファンの反発が持続

この比較からわかるのは、事務所が問題の種類によって対応を「使い分け」しているということです。「著作権侵害」や「宗教問題」のように、法的なリスクがあったり、特定の強力な団体から抗議されたりする可能性のある問題には迅速に対応します。しかし、文化の盗用のように、誰が被害者か曖昧で、批判の主体が分散している問題は「無視できるリスク」と判断した可能性が高いのです。

【第3章】なぜすれ違う? – K-POPと世界の間に横たわる「文化の断絶」

なぜ、このような問題はK-POP界で繰り返し起こるのでしょうか?その根底には、K-POPの成り立ちと、韓国と世界の間に存在する「認識のギャップ」があります。

「リスペクト」と「盗用」の境界線

現代のK-POPは、1990年代にアメリカのヒップホップやR&Bを積極的に取り入れたことから発展しました。いわば、様々な文化を融合させてきたハイブリッドな音楽です。

問題は、その文化の背景にある歴史や人々の闘いを無視し、スタイルだけを「クールなコンセプト」として消費するとき、尊敬を意味する「リスペクト」が、搾取を意味する「盗用」の領域に足を踏み入れてしまうことにあります。

「グローバル化のパラドックス」

皮肉なことに、K-POPはブラックカルチャーを取り入れたことで世界的な成功を収めました。しかし今、その成功によって獲得したグローバルなファンたちから、彼らが持ち込んだ新しい倫理観(「文化の盗用は許さない」など)によって厳しくジャッジされているのです。

これは、韓国が歴史的に単一民族社会に近く、「文化の盗用」という概念が欧米社会と同じ重みで共有されてこなかったことも背景にあります。この認識のギャップが、アーティストや事務所の意図とは無関係に、ファンとの深刻なすれ違いを生んでいるのです。

【第4章】未来への処方箋:炎上を「成長痛」に変えるための3つのアクション

では、この問題を乗り越え、K-POPがさらに発展していくために、何ができるのでしょうか?事務所、アーティスト、そして私たちファンができることを具体的に提案します。

提言①:事務所へ – 事後対応から「積極的な文化戦略」へ

  • 文化研修の導入: 練習生やスタッフを対象に、インスピレーションの源となる文化の歴史や背景を学ぶ体系的な研修プログラムを導入する。
  • 専門家チームの設置: コンセプトを決める前に、多様な文化の専門家からなるチームにレビューを依頼し、無意識の偏見や間違いを未然に防ぐ。

提言②:アーティストへ – 「インフルエンサー」としての責任

  • インスピレーションを語る: 影響を受けたアーティストや音楽について、自身の言葉で語る機会を設ける。これにより、「盗用」ではなく、出典を明記した「敬意ある表現」へと印象を変えることができます。

提言③:ファンへ – 「キャンセル」から「建設的な対話」へ

  • 教育的キャンペーン: SNSで感情的に非難するだけでなく、問題の背景や改善してほしい点をまとめた資料を作成し、組織的に事務所へメールを送る。
  • 経済的アプローチ: 事務所のスポンサーや投資家に対し、この問題が企業のブランドイメージを損ない、経済的なリスクになりうることを論理的に伝える。

【結論】沈黙の賭けの果てに – K-POPは真のグローバル市民になれるか?

TARZZANを巡る一連の騒動は、K-POPが単なるアジアの音楽から、真のグローバル産業へと進化する過程で避けられない「成長痛」と言えるでしょう。

THEBLACKLABELが選んだ「沈黙」という戦略は、短期的には国内市場を守るという目的を達成したかもしれません。しかし、長期的に見れば、文化的な感受性を大切にする世界のファンからの信頼を失いかねない、非常に危険な「賭け」です。

この問題を一過性の炎上で終わらせず、私たちが愛するK-POPカルチャーが、より多様な文化に敬意を払い、世界中の誰からも愛される存在へと成熟していくための対話のきっかけとすること。それこそが今、アーティスト、事務所、そして私たちファン一人ひとりに求められているのかもしれません。

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